ベッドの軋む音に、心臓が跳ねた。
行くも行かぬも
放り投げられるのかと思っていたのに予想外に丁寧に降ろされて、少しば
かりその意外性に驚きながらも礼を言おうと顔を上げたのだけれど、それ
は叶わなかった。
カカシの顔がもうすぐそこに迫っていたから。
条件反射のように目を閉じれば、顎に指が添えられて、それから柔らかな
感触が唇に落とされる。少し乾いてかさついたそれに「いつも口布で覆っ
てるのに」と不思議に思ってることは内緒だ。
けれどそんな他愛もない思考はするりと入り込んだ彼の舌にあっさりと奪
われてしまう。上下の歯列をなぞり、上顎の内側を擽られ、舌を絡め取ら
れて擦り合わせる。
「んっ……ふぅ…」
「気持ち良さそうな顔してる」
が苦しくなるギリギリのところで開放すると、クスリと笑われた。
「だって…」
「気持ち良いから仕方ない?」
見透かすカカシが憎たらしい。
でもその通りだから何も言い返せない。
だからは、その憎らしい唇を自分のそれで塞いでやった。
主導権を握れるのは一瞬で、すぐに取り返されるのはわかりきっていたけ
れど。
二度目の深いキスは、今度こその全身の力を抜いてくたくたにして
しまう。はこの瞬間が一番好きだった。
全身の力も、羞恥も、虚栄も意地も、全てがカカシによって溶かされて、
本当の本当に素のままの自分が抱き締められている気がするから。
そうして、今夜ものスイッチが切り替えられる。
「ん…さんて、ホントにキスが好きだよね」
「ぅん……すき……」
素直に頷いて、は「もっと」と力の篭らない腕でカカシの頭を引き
寄せる。その、とろんとした目つきと紅く熟れた唇にぞくりとカカシの雄
が煽られているとも知らずに。
「んじゃあ、もっと気持ち良いキスを一杯してあげる」
いとも簡単にの腕の中から逃れたカカシはの両脇に手を差し
入れて上半身を起こさせると、くるりと後ろを向かせた。
「え? カカシさん?」
「先ずは、背中ね」
言うと同時にシャツが剥ぎ取られた。
それで初めて、キスの間にボタンが外されていたことを悟る。
中に着ていたキャミソールに続いて下着も慣れた手つきで脱がされ、あっ
という間に素肌が曝される。
後ろから抱き締められ、頭頂からちゅっとリップノイズがしたと思ったら、
すぐさまそれは順に下に下りていって、さして長くない髪を掻き上げられ
て露になった項に、柔らかくも乾いた唇が押し付けられた。
と思ったら、ベロリと生暖かい湿ったモノがそこを這った。
「ひぁっ!」
思わず跳ね上がった身体をカカシの腕が抑える。
存分に項を味わった唇と舌は、徐々に下っていき、やや下がり気味の肩を
這い、肩甲骨の尖りと窪みを弄り、脇に齧り付き、すっと通った背筋を唾
液で光らせた。そうしながら、を抱き締める腕は胸や下腹を撫で摩
り、時折思い出したように硬くしこった胸の頂を摘み捻って悪戯する。
その度にの身体は小刻みに震え、跳ね、反応する。カカシがそれを
楽しんでいるのは明らかだが、既にスイッチの切り替わってしまった彼女
には抵抗する意思も理由もない。
それでも、人形のようにカカシに身を任せてだけいるのは少しばかりつま
らないから。
はカカシの唾液でてらてらと光る左手を後ろに回し、自分とカカシ
の身体の間に割り込ませた。すぐに見つけたカカシの下腹を滑り、熱を持
ち始めているそれを見つけ出す。
衣服の上から優しく撫でれば、カカシが一瞬動きを止めた。
「や、カカシさんばっかり、ズルイ」
「な〜にが?」
首を捻って後ろを振り向くと、分かっているくせに空惚ける端正な顔。
悔しくて、その鼻先にごく軽く齧りついた。
「服、脱いで」
「りょ〜かい」
が言うと、カカシは嬉しそうに笑んでほんの数秒だけ腕を離した。
「お待たせ」
すぐに戻ってきた腕に身体を預けると、暖かで柔らかい素肌がの背
を包んだ。それに安心して、ほぅ、と息をつく。
「気持ちいい」
「俺も」
自然に浮かんできた笑みのまま唇を触れ合わせて、カカシはの右手
を取ると二の腕から肘、肘から手首までを唇で辿り、それからもう一度、
今度は腕の内側を丁寧に舌で舐め回す。
「ん、あっ」
擽ったさに肩を竦めながら、はもう一度左手を背後に回す。
見つけた熱い塊に指先を這わせた。
何度も往復していると、カカシがもどかしげに身じろぎする。それを合図
に掌全体で包むように握って上下に擦ると、じわりと濡れた感触が指に絡
みだす。カカシの熱い吐息が口内に含まれた指先に何度も触れた。
「カカシさん、きもち、い?」
「ん、いーよ。……でも、もうダメ」
言われて、ぐっと背を押されてベッドにうつ伏せた。
「ぁんっ」
必然的に離れてしまった手の中の熱が名残惜しくてちらりと振り向いて睨
んだが、カカシの頭は予想していた場所になかった。
訝しく思う間もなく、尻の肉が鷲掴みにされ、荒々しく揉まれたかと思っ
たら、
「うにゃぁ?!」
がぶり、と噛まれた。
血が出るほどではないが、痛みが少しばかり後を引く、それくらいの強さ
でカカシは何度もの尻を食んだ。
「やぁっ、カカシさんっ、痛いっ」
「そ? ごめ〜んね、すごく丁度いいカンジの弾力だったから、つい」
つい、で噛まれては堪らない。
じろりと睨んでみても、紅く染まった頬に潤んだ瞳ときては迫力なぞある
筈もなく、逃げようとした腰はがっちりと抑え込まれて逆に引き寄せられ
てしまった。
「ここで逃げるなんて酷いでしょーよ、さん」
「痛いのは、嫌」
じとりと、できるだけ恨みがましく応えると、カカシは全く反省していな
い様子でもう一度謝罪の言葉を口にする。
「お詫びにさっきよりもっと気持ち良くしてあげる」
言われて、その言葉の意味を理解するよりも先に、痺れるような感覚が背
筋を走りぬけた。
「ひぁっ、ああっ……んぁっ」
脚の間にぬるりとした生暖かなものが押し付けられ、それがぐにぐにとそ
こを乱す。そうかと思えば、舌とは全然違う、細く長い指がそこへ入り込
んでくる。我が物顔に押し入り、内壁を引っかかれ、ぐちゃぐちゃに掻き
回される。硬く勃ちあがった芽を指の腹で弄られる。
「あぁっ、んんっ、あっ、はぁっ!」
送り込まれる刺激にもう喘ぐしか出来ない。
上半身を支えていた腕の力が抜けて、そこだけを高く掲げカカシに押し付
ける恰好になってしまっていることにも気付けない。
否。
違う。
分からないんじゃない。
もう、そんなことどうでも良かった。
「すごい、ね。もうぐちゃぐちゃだよ?」
「あん…っ」
揶揄うカカシの囁きさえ、の肌を粟立てる。
「あぁ……ねぇ、カカシさん」
「ん〜?」
肉の快楽に溺れきった瞳がカカシの顔を映し込む。
「も、おねがい」
ちょうだい。
がまんできないの。
「カカシさんがほしいの」
殆ど吐息だけで囁いて、カカシの顔を引き寄せた。
ちゅ、と聞こえたその音がどうしてだかとても嬉しくて。
クス、と小さく笑んだその瞬間に、それは来た。
「ああっ!」
「んっ、また、締まりのいーこと」
全部を内に納めたかと思うと、すぐさま激しい注挿が繰り返される。
いつもなら、がその感覚に慣れるまで少し間を空けてくれるのに。
「あっ! ああっ! ふっ、や、やぁっ! カカシ、さんっはげしっ!」
「だぁって、久し振り、だし。さん、かわいーことばっか言ってく
れ、ちゃうしっ?」
途切れがちになるカカシの言葉に背後の彼を振り返ろうと首を捻ると、カ
カシもまた顔を間近に寄せてきていた。
そのまま唇に噛みつかれ、空気を求めてか喘ぎが抑えられなくてか
が口を開けると長く器用な舌が差し込まれる。
上も下もカカシに埋め尽くされ、は簡単に押し上げられていく。
「んんっ! ふっ! んぁ! カ、カカシさんっカカシさんっ」
「っ、さん…っ、締め過ぎっ」
「や、だってだってっ……ふあ?!」
突然ずるりとそれを抜かれ、は大きく身震いした。
「ちょっと、ごめん」腰を押され、ぐるん、と仰向けにされる。
すぐに脚を高く抱え上げられた。
「はい、お待たせ」
「あぁんっ」
ぐっと熱の塊が入り込んでくる。
さっきまでとは違う角度で違う場所を攻められての背が仰け反った。
律動が再開されると、すぐに淫らとしか言い様のない水音がの鼓膜
を犯してくる。
肌に落ちてくるカカシの汗さえ、熱くて、熱くて。
「も、もぉむりぃっ」
「…っ……たまんない、ね」
身体に全く力が入らないのに、全身が強張っていく。
白い光が、の思考をどんどんと埋めていってしまう。
カカシが腰の動きを一層強く、激しいものに変えた。
「あ、あぁっあぁあっ、〜〜〜っ!」
「……っく、……!」
頭の中が真っ白になって。
抱き締めてくれるカカシの熱さだけが身体に刻み込まれた。
next.
背景写真提供:be sweet on...様(リンクページからどうぞ)