「さぁ! 昨日はカカシに譲ったけど、今日はアタシに付き合ってもらう
わよ!!」
行くも行かぬも
威勢良く、という言葉がぴったりな態度で現れたアンコにがっしりと腕を
掴まれながら、カカシも彼女も、忍者というものはどうしてこうも唐突に
現れるのが好きなんだろうかと益体もないことを考える。
しかも狙い済ましたように いや、実際に狙っているのだろうが 彼
女の勤務終了時間ぴったりだ。不規則な彼女のシフトを一体何処で調べて
きているのか。一度訊いてみたい気もするが、どうせ「調べるのが忍者の
本業よ」とでも言われて終わるのだろう。
「ねぇね、どこに行く? 折角むっさい男供がいないんだし、紅のオスス
メのちょっと小洒落たワインバーなんか良いかもね。あ、アンタは焼酎党
なんだっけ? ま、なんでも良いんだけどさ」
「いや、まぁ何でもいいんだけどね……」
の意見を聞いておきながら、結局自分の行きたいところに勝手に決
定されるのは毎度の流れなので、今更も異を唱えることはしない。
二人と違ってあまり量を飲まないにとっては、酒の種類よりも酒肴
が美味いかどうかの方が余程重要なのだが、その点、酒豪は舌も肥えてい
るものらしく二人が連れて行ってくれた店でハズレだったことは一度もな
いから心配はしていない。
それよりも気になったのは。
「女だけって、紅さんも来るの?」
「そぉよ〜。紅は後から合流!」
当然、とばかりに頷かれて、ならば安心だとこっそり胸を撫で下ろす。
何せアンコは誰もが認める、自覚の全くない大トラなのだ。彼女が酔って
しまったら一人の手には余るが、紅に押し付けてしまえば問題はな
い。
もっとも、二人きりで飲んだとしてもには医療忍術で強制的にアン
コの酔いを醒ますという必殺技があるので然程心配もせずに気楽に誘いに
乗っているわけだが。
「さぁ! んじゃあ行くわよ!」
だが。
帰り支度を終えたのバッグを取ろうとしたアンコの手は、空振った。
「ま〜った、俺に無断でさん連れまわそうとするんだから」
それはの体を背後から包むように抱き締めるカカシの手に。
「なによっ! 昨日はあんたに譲ったんだから、今日はアタシ達の番って
もんでしょ!」
「はぁ? 何言ってんの、お前」
「なにがよ!」
「アンコの番なんか未来永劫来るわけないでしょーよ」
心底呆れたように言い切ったカカシは、構ってられないとばかりにひょい、
とを肩に担ぎ上げると、顔の大半を隠しているにもかかわらず勝ち
誇った笑みとはっきり分かる雰囲気を滲ませて振り返った。
「なんたってさんの頭の天辺から足の爪の先までぜぇ〜んぶ、俺が
唾つけてんだからさ」
fin.
背景写真提供:be sweet on...様(リンクページからどうぞ)
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お題「よだれ」。(直球過ぎ…)
タイトルは古典の都都逸より
『二人手をとり 静かに乗りな 行くも行かぬも 棹次第』
が、全文。
カカシさんなら毎日どんどこ海の果てまで行っちゃってそうですな!
むしろ
『ゆうべしたのが 今朝まで痛い 二度とするまい 箱枕』
から取った方がよかったかな(笑)。