「おー、結構いけるな、これ」
「うん、あっさりしてて食べやすいよ」
「悪くはねぇな」
「そうでしょう。ゴーヤーは美味しいからね」
「ゴーヤロールって聞いたときはげぇって思ったけどな」
「完全にネタ扱いかなって思ったよね」
「数あるフレーバーのなかからゴーヤーを選ぶとは、君、意外とセンス良いですね」


にっこりと、殺し屋さんが上機嫌で褒めてくださいました。
始めは単に興味本位だったに違いない景吾君と宍戸君と滝君も綺麗な笑顔を向けてくれる。

……盛大なるブーイングと歪んだ顔の嵐(特に甲斐クンと平古場クンとがっくん)を背景に。


「は、ははは。ありがとう」


……すいません、完璧ネタのつもりで買ったんです、それ。
今更言えないよねぇ、と内心で溜息をつく私の手元のお皿には、マンゴー色したロールケーキが一切れ鎮座ましましている。










La Dolce Vita
〜海中遊泳 南の島の刺客たち〜











そんなこんなでティーブレイクも一通り終ってしまい、さてどうするか。
という話になった。


「観光するんなら案内するばーよ」
「っていうても、今からやと中途半端やしなぁ?」
「だーるなー」


おっしーの言葉につられるように時計を見遣れば、もう16時近い。
外はまだまだ明るいとはいえ、フミ子さんがお夕飯の準備をしてくれてい
るので、遅くとも20時頃までには戻ってこなければならないことを考え
ると、どこへ行くにしても確かに中途半端だ。
かといって、またテニスを再開、という気分でもないらしい。
……多分、そうなったら見学してるか一人で部屋で時間を潰すしかない私
を気遣ってくれてるのも、理由の一つだと思う。
ホント、いい子達だ。


「……では、泳ぎにでも行きますか?」


こっそりじんわり感動してたら、木手君がそう言い出した。
言うだけでなく、質問してるくせにもう既に立ち上がっている。
比嘉中の皆も、「そうだな」とか言いながら続々と立ち上がって鞄なんか
を取り上げていて、行く気満々だ。
っていうか、え?
いつの間に確定したの?


「何をしてるんです? さっさと行きますよ」


完璧に話についていけてない私達を見下ろして、呆れたような溜息。


「え? 今から? マジ?」
「だってもう夕方だよ〜?」


がっくんやジロちゃんの反論は、鼻先3mmで笑い飛ばされた。


「真逆君達は昼に泳ぐつもりだったんですか?」
「ははっ。そりゃー無謀ってやつさー」
「軟弱な本土モンにゃ無理やっしー」


……あー、うん。
悪気はないんだろうとは思うんだけどね。
どーしてこの子達はこーいう言い方しか出来ないかなぁ。


「ンだとぉ、コラ」
「やんのかよ」
「宍戸、やめとけ。岳人も」


挑発に乗りやすい二人をおっしーが咄嗟に抑える。
でも、そのおっしー自身もうっすらと不穏な雰囲気を醸し出してる。
彼らだけじゃない、あっという間に氷帝vs比嘉中な図式が成立してしまっ
ていて、私は軽く頭痛を覚えた。
普段どんなに大人っぽくても、やっぱり子供なんだよね。
血気盛んと言うか、血の気が有り余ってるというか……。


「若いなぁ…」


しみじみ呟いたら、跡部君に「何他人事みたいなツラしてやがる」と頭を
小突かれました。地味に痛い。






はいはい。


「んじゃ、水着とタオル用意してくるからちょっと待っててね」
「は?!」
「っておい! 行くのかよ?!」
「行くよ? 折角木手君たちが誘ってくれたんだし。それに、沖縄の日差
しってきついからお昼間に泳いだら火傷しちゃうもん。日が落ちかけてる
今くらいが丁度いいんだよ〜」


と、水着を買ったお店で店員さんが教えてくれました。
木手君達も最初から素直にそう教えてあげれば良いのにね。これが若気の
至りってやつなのかしら。










「…ったくよ〜、だったらそう言えっつーんだよ」
「紛らわしいよなー」
「君達、何時まで言ってるのー?」


照れ隠しなのかなんなのか、相変わらず唇尖らせてぶつくさ文句を言って
る二人のことは放置することにして、潮の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
ゴミ一つなくきれいに整えられたここは、榊家所有のプライベートビーチ。
あるんだろうなと予想してたから、今更驚かないぞ。
例えフミ子さんに別荘の裏手の階段を下りるだけで着くんだと知らされて
も、砂浜にそれは立派なデッキチェアとパラソルと広々としたシートが敷
かれていて、そこに景吾君がふんぞりかえってフルーツカクテルなんか飲
んでたりする姿が異様に似合ってても、今更だ。うん。

その景吾君は、私が近づくなり遅いと文句を言ってきた。


「しかもなんだ、そのカッコは」


アーン? とお決まりの口癖つきで指摘された私の恰好はと言えば、膝下
で切り落としたジーンズに、ベージュの長袖パーカーのファスナーを上ま
できっちり上げて、足元はクロックスの黒のサンダル。


「……何かおかしい?」
「いや、おかしいとこだらけやろ」
「水着は〜? 俺、ちゃんの水着姿楽しみにしてたC」
「もしかして、水着がない、とか?」
「そんなわけねぇだろ。ちゃんと部屋に用意してあったはずだ。俺に抜か
りはねぇ」


あー。あれ、景吾君のチョイスだったんだね。
なんか、水着だけで5〜6着あったけど。


「水着は今日、改めて買いました。ちなみに今下に着てます」
「アン? 俺様の選んだ水着が気に食わないってのか?」
「当たり前! 着れるか、あんな表面積の小さい水着!」


ちょっと泳いだだけで色んなところがはみ出すわ!
確実に実用性ないでしょ、アレ!!
っていうか景吾君、チッとか舌打ちしない!


「ま、なんでもいーけど、下に着てるんだろ? だったら早く脱いで泳ご
うぜ!」


言うなり、ガックンが腕を引っ張ってくる。
ちょ、ちょっと待って!


「なんだよ?」
「……やっぱり脱がないとダメ?」
「? 当たり前だろ? 濡れちまうじゃん」
「だよねー…」


いや…うん、沖縄にきたときから覚悟はしてたんだけどね。
この煌びやかなメンバーの前で貧相な身体を曝け出すのか……ううっ。


「…脱ぎたくないなら、そのまんま泳げばいい」


項垂れた私の頭にぽん、と手を置いてそう言ったのは、知念君だった。


「へ? そのまんまって…」


着衣のままでってこと?
そう聞き返しかけて、ぎょっと目を向く。
何故なら、知念君はTシャツとジーパンのままずぶ濡れ状態だったからだ。
見れば、既に海に入ってる比嘉中の面々は皆着衣のまま。水着に着替えた
りなんてしていない。


「服なんかすぐ乾くさー。わったーはわざわざ着替えたりしない」
「ご、豪快だね」


いや、この場合は大胆?
なんだか微妙にコメントがずれてる気がしなくも無かった。










next.
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泳ぐには至らなかった…
氷帝っ子たちは全員水着着用です。