「本当…ですか?」


どこか呆けたような顔で問い返されて、自分が出した答えが間違っていな
いと分かった。











世界とえにしても欲しいモノ










「本当だよ」


しっかり目を見て頷けば、の手がカカシのそれを掴んだ。
頭の上から引き剥がし、目の前まで下ろすと両手で握った。


「冗談とかじゃ、ないですよね?」
「も、しっかりがっつり本気。これ以上の本気はないってくらい本気」
「……私を止めるって、どういうことか判って言ってるんですね?」


その気になれば里を壊滅させることくらい簡単に出来てしまう程の強大な
チャクラを持つ彼女の暴走を止める  それは口で言うほど容易なことで
も単に目を覚まさせればいいというだけの安易なことでもなく、そこには
「命懸けで」「を殺してでも」という意が確かに含まれている。

否、含まれているのではない。
ほぼそれだけで構成されている。

カカシは全て諒解した上で、それでも表面上は無造作に頷いた。


「勿論。ちゃんと覚悟してる」


カカシが答える毎に、の手に力が篭もっていく。


「……カカシ、さん」
「うん」
「カカシさん」
「うん」


怖かったね、と。わかってるから、と。
想いを篭めてカカシは逐一頷きを返す。


「カカシさん、カカシさん、カカシさん…っ」
「うんうん」


ぼたぼたと落ちた涙が卓の上に小さな水溜りを作った。
構わずカカシの名を呼び手を握り続けるの姿は、まるで神に祈るか
のようで、そうすると祈りを向けられている自分は神ってことになるでは
ないかと思い当たって、カカシは些か憮然とした面持ちになった。

自分は神なんてガラではないし、そんなものになりたいとも思っていない。
なりたいのは「に愛される唯一の男」であって、「の神」で
はないからだ。


「……あの」
ーーーっ!」


耐え切れずに体当たりするかのごとくに抱きついたアンコが、そろ
そろ本筋に戻そうと切り出しかけたカカシよりも先を行った。


「アンタったらどーしてそんなにいぢらしいのぉっ?!」
「アンコちゃん…っ」
「大丈夫よっ! アンタのことはこのアンコさんが守ってあげるからね! 
一般人のアンタを里の為に犠牲になんて絶対、も、ぜっっっっったいにさ
せやしないから!!」
「…っ、アンコちゃんごめんね、変なこと言って本当にごめんなさい。大
好きだよ、私、皆のこと、本当に大好き…っ」
っ」
「私も大好きよ、!」
「紅さん!!」


はすっかり箍が外れてしまったのか、逆にアンコをしっかりと抱き
しめて、わんわん泣き始めてしまった。
それをアンコが感激して抱き締め返し、更にその2人を紅が胸の中に抱きこ
んで、ここが居酒屋でくのいちの2人の息がすっかり酒臭いことに目を瞑
れば、まるで一昔前の青春ドラマのような光景である。

…………その証拠に、隣の卓のガイが無意味にもっともらしく頷きながら
もらい泣きしている。


「………盛り上がってるとこ悪いんだけどね?」


指で頬を掻きつつ、カカシが口を挟んだ。


「……はい?」


ずびずび泣いていたので間が空いたのは仕方がない。
それでも素直に顔を上げたにカカシは少しばかり困ったような、そ
れでいて照れくさそうとも取れる曖昧な笑顔で言った。


さんの返事、貰ってないんだけど」


あっと叫んだのはで、そういえばそうだったな、と囁きあったのは
男性陣。女性陣はと言うと、「そんなこと改めて訊かなくても…」「だか
ら男って野暮なのよ」と容赦なく冷たい視線が投げられる。

が、そんな野次には構っていられない。
カカシは「どうなの?」とあくまでもに詰め寄る。


さん?」
「……え、えっと」


ずいっと顔を寄せれば、その分だけが身体を引く。
それでも嫌がられているわけではないのはその表情を見れば明らかで、だ
から余計にカカシは図に乗ってしまう。


「俺が嫌い?」
「そ、そんなことっ!」


ないない、と目一杯首を横に振って否定するが嬉しくて愛しくて、
カカシは笑いをこらえるのに一苦労だ。


「じゃあ、OKしてくれる?」
「う……」
さん」


それはもう問い掛けではなくて返事の催促でしかなくなっているのだが、
いっぱいいっぱいのにはツッコミを入れる余裕がない。


「……カカシ、さんは」
「ん?」


たっぷり時間を掛けて言葉を詰まらせた後で、はそろそろと口を開
いた。


「私……こんな面倒な人間ですし、さっきも言いましたけど、大雑把でガ
サツで面倒くさがりで飽き性です、けど」


本当に、私で良いんですか?
頬を染めつつの遠慮がちな問い掛けは、もう肯定の返事と同義語だ。


「勿論」


答えるカカシの表情は、部下たちに散々嘘臭いと言われている満面の笑み。
それを見て全身朱に染まったはおずおずとカカシの手を取った。


「あの……それじゃあ……えと」
「うん」
「……お買い上げありがとうございます」




それは違うだろ。



その場にいたカカシ以外の全員がツッコんだが、当の本人は


「大事にするからね?」


気にした様子もなく、至極幸せそうにの手を握り返していた。












next.
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やっと報われました(笑)
次回、連載最終回です。