「どういう関係ですか」
と、訊かれても。
「ナルトのお陰で仲良くしていただいてますが」
としか答えられない。
だってそれが事実なのだから。
世界と引き換えにしても欲しいモノ
「な、なによそれ。馬鹿にしてるのっ?!」
「いえ、別に…」
にしてみればそれが事実で、それ以外に言い様がないだけなのだが、それは
却ってこの女性陣の神経を逆撫でしてしまったらしい。
「なんなのアンタ! ちょっとばかり上忍の人たちに人気だからっていい気になら
ないでよ!」
「……は?」
「そうよ! はたけ上忍とあんなにベタベタしてるくせに、アオバさんにまで色目
使っちゃって!」
「はぃ?」
「並足特上にもよ!!」
「この間は不知火特上にべたべたしてたわ!!」
「…………………えーっと」
なんだ、それは。
結局のところ、ただのやっかみらしい。
しかも、完全に根拠のない言い掛かり。
「……馬鹿馬鹿しい」
こっちは仕事帰りで疲れが溜まってるというのに。
何でその上こんなことで煩わせられなければならないのか。
早く帰らなくては。
もう直ぐ日が落ちてしまう。
「ちょっと?!」
の呟きが聞こえてしまったのだろう。
周りを囲むくの一たちの空気が一瞬にして怒気を孕んだ。
だが。
「…え?」
「な、なに?」
「体が…?!」
それは間を置かず戸惑い、困惑へと一変する。
そしてそれを冷ややかに眺める。
「付き合ってられないんで、申し訳ないですが“金縛り”させて頂きました。皆さ
ん、私をただの医者だと思って油断しておられたようですが、医者を甘く見ないほ
うが身の為ですよ?」
任務で怪我を負ったとき、その治療をするのは『医者』なのだから。
うっすらと笑みを口元に刷いては全員の顔を一瞥すると、
「一般人を誘拐して脅迫まがいの行動を起こしたこと、ここで三日程反省して下さ
い。また逆恨みして何か仕掛けようとしてきたとしても……皆さんの顔は覚えまし
たから、そのときは遠慮なく火影様に報告させて頂きますので、悪しからず」
それきり、後ろを振り返ることなくその場を離れた。
しかし、のその足がピタリと止まる。
そこは丁度、アンコと紅が潜んでいる茂みの手前で。
「……まったく、もう」
「……っ」
「!」
が珍しくも少しばかり剣呑な表情で溜息をついた途端、二人は蒼白になった
顔を見合わせた。
この状況で、一般人のが気配の個人識別まで出来るとは考えられない。とい
うことはつまり、がここに潜む気配をさっきのくの一たちの仲間と誤解した
可能性はとても、高い。
冗談じゃないわよ!!!
意思の疎通は一瞬で完了。
「やっ、違うからね!」
「私たちよ! アンコと紅!!」
「うわ?!」
自分たちまで誤解で固められ手は大変とばかりに慌てて飛び出した二人だったが、
急に姿を現した二人には何故か後ろに転げ込まんばかりに驚いていた。
「ア、アンコちゃんに紅サン?! 何でこんなとこに…」
「あ……あら?」
「何でがそんなに驚いてんのよ? アタシらの気配に気付いてたんでしょ?」
「気配?」
問われたは逆に首を傾げた。
「気配なんて読めないよ、私?」
「え?」
「だって、アンタ今、アタシらの前で立ち止まったじゃない」
「いや、それは単にここがどこかさっきの人たちに聞くの忘れてたから、聞きに戻
るの面倒くさいなーって」
「…………それだけ?」
「はいな」
「…………」
「…………」
「…………」
考えてみれば……いや、考えるまでもなく。
仮にも上忍と特別上忍の自分たちが消していた気配を、同じ忍びですらないが
読み取れる筈もないのだった。
そんな当たり前の常識を狂わせたのは、言うまでもなく先程がくの一たちに施
した術の鮮やかさのせいだ。
「そうよね、は綱手様の手解きを受けたとはいえ、一般人だったんだわ」
「つい勘違いしちゃった…」
ふぅ〜〜〜。
忍びとして、あるまじき失態を晒したことに今更ながら気付き、深い溜息が里随一
のくの一二人の口から漏れた。
「でもさ」
しかし、立ち直りも早いこの二人。
「はい?」
「さっきの術、凄かったじゃない! アレ何? 何であんな術をが使えるの?」
「あー……あれです、か?」
「そうね、私も知りたいわ。まるで『影縛りの術』みたいに鮮やかだったけど、影
が動いたようにも見えなかったし、幻術でもないみたいね?」
「いや、そんな凄い術でもないんだけど……単にあの人たちの体の周囲に1センチ
の隙間を空けてチャクラで固めただけだから」
「ええっ? なにそれ。聞いたことない技ね」
「印も結んでなかったわよね?」
「えっと、印は必要なくて。その、手術する時に血が噴出さないように血管をチャ
クラで固めたりするのの応用、というか……」
「へぇ、だけど一瞬であの人数固められるんだからかなりの制御力よね」
「そんなことは…複雑な血管を塞ぐのに比べたら……」
「私も教えてもらったら出来るようになるかしら?」
「ど、どうかな?」
目新しい技に目がない辺り、流石は一流の忍者だとは思うが、追求されるの
ほうは冷や汗もので、どんどん説明がしどろもどろになってゆく。
それも当然のことで、はただイメージすれば良いだけなのだ。
もちろん、細部に亘るまで一瞬で精密にイメージできるのその想像力は本人
が認識している以上に並外れているのだが、それにしてもはほぼ無意識かつ
無自覚に行っていることなので、あまり詳しく訊ねられても答えられる筈がない。
その上、その辺りを詳しく突っ込まれると今や機密扱いとなっているの出自
まで話さなければならないことになり、それもまた冷や汗の原因となっている。
「それにしても、3日も拘束できる術なんて覚えられたら便利よ〜?」
「あ、それはナイから」
アンコの漏らした一言を、はあっさり否定した。
「え? だってアンタさっき」
「アレはただのブラフ……というか、脅し? 本当は3時間もしたら効力なくなっ
て自由に動けるようになるの」
「は?」
「だって、3日も固めてたら死んじゃうでしょう。人間って水ナシだと1日と保た
ないんだよ?」
「や、それは知ってるけど…」
本当は、が望めば3日どころか1週間でも1ヶ月でも固め続けることが可能
なのだが、そこまでは言う必要はないだろう。
「流石に、医者が人を殺しちゃマズいので」
困ったようないつもの笑みを浮かべれば、アンコは何故か呆気にとられたような顔
でを見つめた。
「……もしかして、体から1センチ間隔空けて固めたのって」
「ぴったりにしちゃうと呼吸できなくなるから」
紅の問いに事も無げに頷く。
二人の敏腕くの一は、彼女に喧嘩を売ったくの一たちに初めて同情の念を覚えたの
だった。
そんなこんなでくの一たちのどたばたも知らず、カカシ・アスマ・ガイの野郎3人は
意外とまったり飲んでいた。
「しっかし、ガイまでさんと知り合いだったとは思わなかったねぇ」
「リーが結構無茶をするんでな、には何度かお世話になっているんだが、彼
女はほんっとうにいい娘さんだ。なんと言ってもあの笑顔がいい!」
「あ〜、そうだな。あの困った〜って顔見ると何とかしてやろうとか思わねぇでも
ねぇな」
「ナニ、アスマ。まさかお前も…?」
「馬鹿言ってんじゃねぇ! ……あー、あれだ。子供が道端で途方にくれてんの見
るとつい声掛けちまうだろ、あんなんと同じだ」
「ホ・ン・ト〜?」
「馬鹿野郎」
じっとりと睨みつけるカカシの頭をアスマは鬱陶しげに叩いて、
「お前と一緒にするな」
と一言。
その時、店の入り口付近がいきなり騒がしくなった。
next
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変なところで切ってしまった。
だって長くなるし。