いつもの職場からの帰り道。


「や」
「あ、カカシ先生」


たまにこうして時間が重なることがある。
特に約束なんてしていない、けれど。


「今からお帰りですか?」
「まーね。さんも?」
「ええ」


「途中まで一緒に帰ろう」なんて言葉も特に必要なく、それはもう習慣のように当
たり前になっていて。


「大分暑くなってきましたねぇ」
「もう夏だねぇ」
「夏ですねぇ」


なんて。
まったり感まで漂わせつつ、二人並んで帰る姿が目撃されて、里の一部で物議を醸
してるなんて事も知らずに。








世界と引き換えにしても欲しいモノ










「だーーっ、もう!」
「なによ、あれ?! あの『長年連れ添った老夫婦』のようなまったり感は!!」


我慢できずに叫んだくの一二人は里でも有名な上忍と特別上忍で。


「まあ、あれがあいつらの付き合い方なんだろ。周りが口挟むこっちゃねぇさ」


に、してもあのカカシがねぇ…
呆れつつも面白がっているのが丸解りの表情で大量の紫煙を吐き出すアスマに、紅
とアンコはきっと険しい顔で振り向いた。


「「だってじれったいのよ!!」」


正に異口同音。
ぴったり同じ呼吸なのはさすが忍と言うべきなのかどうなのか。
アスマが悩んでいる間にも二人は


「あの二人、アレでまだ付き合ってるわけじゃないのよ?」
「そのくせ嬉しそうに二人並んで『帰り道デート』繰り返してるし!」
「人目も憚らずね!」
「二人で何話してるのかと思って後つけてみれば、出て来るのは下忍たちの悪戯だ
とか、通りすがりの田んぼに泥鰌がいただとか」
「甘い口説き文句とか一切なし!」
「あんたらどこの老夫婦よー! って感じなの」
「つか、後つけたのかよ……」


二人の出刃亀っぷりに呆れを通り越して脱力感いっぱいの溜息を零したのだが、女
性二人はちっとも悪びれず。

というか、絶対カカシには尾行はばれていたと思うのだが。
出刃亀に気付いてわざと当たり障りのない話をしていたとかは考えないのか?


「とにかく、二人がどう思ってるのか絶対に確かめてやるんだから!」
「……どうやって?」


訊かなければ良かった。

この直後、アスマは何度もこの質問をした瞬間の自分を恨んだのだった。










人はアルコールが入ると本音を言いやすくなる。

それが訓練を積んで上忍にまでなった男に通用するのかどうかははなはなだ疑問だ
が、まあ、確かに普通に人生色々で待機しているときなどに正面切って問い質して
ものらりくらりかわされるのは目に見えているし、居酒屋で気楽に飲んで騒いでる
ついでにならぽろっとぼろを出さないとも限らない。

というわけで、居酒屋『酒酒屋』にカカシを呼び出すのはアスマのお役目となった。
疑われては元も子もないので、カモフラージュにガイも呼んである。
本当は察しの良いイビキか、冷静なゲンマあたりを道連れにしたかったのだが、生
憎と二人とも今夜は任務で不在だった。


「いや、それにしてもこの面子で飲むのは久し振りじゃないか?」


ぶはっと駈け付けでジョッキ一杯を干したガイが言えば、


「そーだな。飲み会と聞けば大抵押し掛けてくる煩いのがいないしね」


と表面上はにこやかにカカシが応じる。

……やっぱバレてるか。

その裏のある笑顔―――カカシはこれをわざとアスマに解るようにやっているに違
いなかった―――に、逆にアスマの覚悟が決まる。


「カカシ、のことどう思ってんだ?」
「……直球だね」


ぐいっと身を乗り出して問えば、カカシがほんの少し驚いた顔を見せた。


「うるせー。まだるっこしいことは嫌ぇなんだよ。いいからさくっと答えやがれ」
「おおっ、それは俺も聞きたいぞ、カカシ!」
「ガイまで……お前が他人の色恋に口出すなんて珍しいじゃないの」
「そうだな、俺はてっきりそういうことには興味ないんだと思ってたが」
「人を朴念仁のように言うな!」


いや、実際そうだから。
心の中の呟きはカカシのものだったのかアスマのものだったのか…


「確かに、俺は恋愛よりも修行を選ぶストイックな男だからな! しか〜しっ、恋
愛もまた大事な青春だ!! 疎かにしてはならん!!」


結局、どっちなんだよ。
またもや、内心で同じツッコミを入れる上忍二人。


「ましてや、問題の渦中にいるのがとなれば、放っておくわけにも行くまい」
「は?!」
「何ぃ?!」


三度目のツッコミはとうとう言葉になって口から零れ出た。


「ガイ、お前さんが好きなのか?!」
「お前もさん狙ってたの?!」
「ぬぉ?!」


カカシを問い詰めるはずのアスマとアスマに問い詰められるはずだったカカシに同
時に詰め寄られて、危うく新たに届いたビールを零しそうになったガイだった。
















一方、の元には紅とアンコの二人がいた。
……というか、元々は紅がを呼び出し、そこに偶然を装ってアンコが合流する
手筈だったのだが、たまたまいつもより早く病院を出てきたをアンコが見掛け、
声を掛けようとしたところへ中忍のくの一がやってきてを拉致った(あれはど
う見ても無理矢理だった)ものだから、慌てて紅へ使いを出し、アンコ自身は後を追っ
たのである。

問答無用でが連れてこられたのは死の森で、そこにはこれもやはり中忍と見ら
れるくの一が数人集まっていた。


「はたけ上忍とはどういうご関係なんですか?」


口調は丁寧だが、目の光は遠目でも解るほどに殺気を孕んでいる。
そうでなくてもいきなり辺鄙な場所に連れ込んで数人で取り囲んでいるだけで立派
な恫喝である。


「どうする? ヤる?」


音もなく追いついてきた紅にだけ聞こえるように囁いたアンコはやけに嬉しそうだ。
だが、紅は小さく首を横に振った。


「なんでよ?」
「あのコたちをヤるのはの返事を聞いてからでも遅くはないでしょ。丁度良い
タイミングで絡んできてくれたものだわ」
「成程」
「但し、の身に危険が及んだら即行助け出すからね」
「了解」


楽しげに頷く二人の目の前で、はきょとんとした表情で自分を取り囲むくの一
たちの顔を見回した。








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ヒロインさんピンチです。(そうでもないけど)
そしてガイ、君もライバルの仲間入りか?!