……そりゃー、正体不明なはずだわ。
世界と引き換えにしても欲しいもの
「おお、よう来たの、」
「お待たせいたしました、火影様。お手数をお掛けしてしまって…」
「よいよい、このようなこともあるじゃろうて」
丁寧に頭を下げるを片手をあげて制する三代目は、どこからどう見ても好々爺
然としていて、カカシは内心で「よくやるねェ」と呆れた溜息をついた。
しかし、この部屋に常以上に厳重に張り巡らされた結界には気付いている。傍らに
控えるイビキはカカシと一瞬だけ目を合わせてニヤリと笑った。
「さて、カカシよ」
「はい」
流石にカカシに対する時には三代目の態度は至極真面目くさったモノに変わる。
カカシもそれに倣って真面目な態度で膝をついた。が、すぐに立ち上がるように促
される。
「この、が何者なのか、というお主の疑問なんじゃがのぅ」
「はい」
「はただの人間じゃよ。忍ですらない、一般人じゃ」
「?!」
人を食った答えに思わず目を剥くが、それは続く言葉に制された。
「ただし、別の世界の、じゃがな」
「……は?」
「異世界じゃよ。あなざーわーるどとも言うかの。とにかくここではない世界のこ
とじゃ」
「………三代目。変なものでも食べました?」
「失礼な」
「じゃなかったら、とうとうボケ……」
「無礼者!」
スコーン!
素晴らしい音を立てて、カカシの側頭部に見事に三代目の煙管がヒットした。
真向かいに座ってるはずの三代目の煙管が何故横から当たったのかは、謎である。
「っ痛!」
「わしはまだまだボケとらんわ! ……まぁ良い。いきなり異世界とか言っても若
いくせに意外と頭の固いお主には納得できんじゃろうて。論より証拠といくか」
「分ってるんなら初めからそうしてよ」内心の突っ込みは勿論口には出さない。
イビキが風呂敷に包まれた荷物をカカシの前に置き、結び目を解いた。
中から現れたのは、風変わりな衣服らしいものと、これまた風変わりな革製の鞄。
「これ、さんの…?」
「私がこの世界に来た時に持っていたものです」
開けても良いのかという目線での問いに、も頷きで応える。
ハンカチやティッシュはともかく、化粧品は見たこともない形と刻印がされている
し、カードケースの中には高度な技術で製造されていると思しきカード類が入って
いる。財布にいたっては、見たことはないが、おそらくこの世界のどこにも真似の
出来ないであろう精巧な紙幣らしき紙片や硬貨の数々……
「これは……」
「勿論調べてみたが、それらを製造している国はどこにもなかった」
イビキの言葉がカカシの予想を裏付ける。
さらに、一巻の手紙が差し出されたが、火影宛、差出人は綱手となっている。
促されるままに紐解けば、内容は綱手がを発見した際のいきさつと、彼女の
の精神と身体に関する詳細な考察、それらに基づく結論から、木の葉での厳
重な保護を火影に願い出るというものだった。
「どうじゃな?」
「くっ、まだまだっ」
一体何の勝負になっているのか。
意地になっているカカシにニヤリと笑んだ三代目は、文机の引き出しから小さな箱
を取り出した。
「……なんです?」
「が身に着けていた首飾りじゃ」
パチリと音を立ててビロード張りの箱を開くと、中からは淡いオレンジと黄色の中
間のような微妙な色合いの石を嵌め込んだネックレスが出てきた。
「これが…? 見たことのない石のようですが」
「そうじゃろうな。里の宝石商に鑑定させたところ、この石は大変貴重なシロモノ
だそうでのう、それ一つで数百万両するそうじゃ」
「数百…っ?!」
「それだけ貴重な宝石なら、普通は流通経路が辿れるものじゃが、のそれは
どこをどう調べても一切記録が見つからんかった。しかも、はそれと対になる
耳飾も持っていたそうじゃ」
「耳飾じゃなくって、ピアスですけどね」
「それはどこに?」
「それが……のう」
「……まったく」
「?」
途端に渋い顔で溜息をついた三代目とイビキの顔をカカシが見比べていると、
が少々決まり悪げに空笑いを浮かべた。
「その〜、あげちゃいました。綱手様に」
「んなっ?!」
アハハハハ。
部屋中に響く乾いた笑い声に、三人分の溜息が重々しく混ざった。
「…まぁ、それはともかくとして、どうじゃなカカシよ。が異世界から来た
こと、納得したか?」
「当然ながら、彼女は俺の尋問をパスしている。嘘を付いていないことは保障する
ぜ?」
「………まぁ、いいデショ」
しぶしぶながら認めたカカシに、もまたほっとしたように微笑む。
「まさか異世界のヒトだとはね〜、あの妙なチャクラもそのせいか」
「そうみたいですね。……何か、ここに来たときに身体の造りが変わったみたいで」
「おお、そうじゃ。その話がまだだったの」
「…まだあるんですか?」
流石に食傷気味な様子を見せると、三代目は「重要なことじゃ」とカカシを窘めた。
そしてに目配せを。
「………?」
カカシの訝しげな視線の先で、三代目に頷いて見せたは徐に着ているシャツに
手を掛けた。
「ちょっ……さん?!」
慌てて止めるのも間に合わず、はばさっと思い切り良くシャツを脱ぎ捨て……
「……何か?」
その下には黒いキャミソール。
キョトンとしたに「何でもないデス」と誤魔化すものの、三代目のニヤニヤ笑
いは止めさせようがない。
「カカシのスケベ心はともかく」
「って三代目!」
それはないデショーヨとのカカシの抗議は綺麗に無視された。
「を良く見ておけ」
「へ?」
胸の前で合わせたの両手の間にドンドンとチャクラが集中していく。
それと平行して露出している肩や肌に浮かび上がってくるのは、
「……呪印?」
「封印式じゃ。のチャクラの大半をアレで封印しておる」
ゆっくり離す手の平の間に現れたのはチャクラで出来た蝶々。
ヒラヒラと飛び立ったそれはゆっくりとカカシの肩に留まり、徐々に金の光と化し
て融けるように消えていった。
「の本来のチャクラは“九尾”に匹敵するほど強大なものじゃ」
「?!」
「しかし、の場合ナルトと違って制御が容易な上、本人はそのことにほぼ無
自覚ときておる」
「無自覚? しかし彼女は」
「制御できぬというのではない。むしろその逆で、制御が容易すぎることが問題な
のじゃ」
「―――私は、ただイメージするだけでチャクラを使えているんだそうです」
の静かな声が二人の間に割り込んだ。
もう一度、手の平大の蝶を作り出しながら、
「例えば、火遁の術というものがあるそうですが、私はそれの使い方を学ばなくて
も頭の中でイメージするだけで似たような技を出すことが出来るのです」
「相手の技をコピーするってこと? 写輪眼もなしに?」
「……似たようなものだと思いますけど」
困ったように笑う。
だが、それも当然のことだろう。
『本来の術』というものを知らないのだから、それが本物の技なのか、似て非なる
物なのかの判断を彼女に下せるはずがない。
「もっとも、あまり高度な術や危険な術は、それを使いこなす身体能力がない為に
使えないがの」
「それだけでなく、イメージさえできれば、全く違うことも出来ます」
こんな風に。
の手の平の中で生まれた蝶は今度はカカシの手に留まり、金の光と化す代わ
りに水となってその手を濡らした。
「今は一匹だけですが、これを何万匹もイメージしたら? 水でなく火に変えたら?
爆発するように変化させたらどうなります? それも、私の持てるチャクラの全て
でやったとしたら」
「………」
国の一つなど、簡単に吹っ飛ぶだろう。
その光景を想像して、カカシの背に冷たいものが走る。
「勿論、私の意志でそんなことしようとは思いません。だけど、もしも」
「敵の手に渡り、洗脳されでもしたら、これほど便利なコマはなかろう」
「……それで暗部をつけてるんですか」
それゆえの護衛。
それゆえの、監視。
カカシの問い掛けに三代目が頷いた。
next
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そう、トリップ夢だったんです、これ(苦笑)
トリップのお約束、全部すっ飛ばしてるんですけどね〜。
ヒロインさんが綱手姫に拾われた辺りの話は、その内
番外編とかで書いていきたいと思ってます。