「三代目の許可があれば、全てお話しします」


……だったら許可を取るまでだ〜よね?










世界と
引き換えにしても欲しいもの











2時間後、カカシは受付所にいた。

任務のない7班の下忍3人にはさっさと演習の課題を与え、念のための監視と監督
に影分身を置いてきたので、問題はないだろう。


善は急げって言うしね〜?


それは違う、と突っ込みを入れる人間は残念ながらいなかった。


「おっつけ、も来るだろう。暫く待っとけ」


カカシを迎えた三代目火影はカカシが用件を言う前にそう言い放つ。
いつもの事なのでもう気にしないが、


「ま〜った、水晶玉で覗いてましたね?」


このスケベジジイ。
釘だけは差しておこう、とわざとらしく笑むと、敵も流石に三代目火影、


「なに、何処かの不心得上忍がに手を出しはしないかと心配でな。何せ、綱
手にくれぐれもと頼まれておるしの」


皮肉も嫌味も何のその、ほっほっほっと笑い飛ばされてしまった。
そうなると成す術はなくなるもので。
カカシは仕方なし、言われたとおりに受付の片隅で待つことにしたのだが、どうや
らその時間は無駄ではなかったらしい。


「―――だからさ、先生は確かに俺に約束してくれたんだって!」


ピクっ。

時ならず聞こえてきたその名前に、カカシは愛読書に隠れるようにして右目をその
声の方へと向けた。


「なにか困った事があったらお前を頼るって? それが信じられないんだよな」
「どういう意味だよ、ライドウ!」
「べっつに? アオバより俺の方が頼りがいあるのになぁって意味だよ」
「なんだと?!」
「まぁまぁ、どっちもどっちじゃねぇか。……それよりも、はたけ上忍がさん
を疑ってるってこと、ばらしちまってることのほうが気になるんだがな、俺は」


廊下の奥から並んで歩いてくるのはゲンマ、ライドウ、アオバの三人だ。
彼らの仲が良いのはいつもの事だが、話の内容が引っかかる。
向こうがこちらに気付いていないのを幸い、カカシは姿と気配を完璧に消した。


「まだ、先生のこと疑ってんだろ? あの人も慎重派だからなぁ」
「彼女はそんな人じゃない! いつまでも疑われてちゃ先生だって可哀相じゃ
ないか!」
「あ〜、はいはい。俺もあの人のことは疑っちゃいねーんだけどな。他国の忍にし
ちゃ、トロくさいし鈍いし表情があり過ぎる」
「いいじゃないか、そこが可愛いんだよ! それに、先生はなんてったって優
しいんだ。俺が先々週の任務で怪我をして里に戻った時なんてなぁ…」
「帰宅途中の先生に出会って、先生はその場で服が血塗れになるのも厭わず
治療してくれたってんだろ。もう何回も聞いたって」
「アオバはそれで彼女にメロメロになっちまったんだもんなぁ?」
「そうだよ! 何か悪いか?」
「悪かねぇよ。ただ、そういう奴がお前一人じゃないってだけさ」


……ふ〜ん? 人気あるんだねぇ。

今初めて知った事実ではあるが、特に意外だとは感じなかった。


あの、柔和な笑顔だとか。

気さくでいながらさり気ない気配りのできるところとか。

分け隔ても裏表もない言葉とか。

そして何よりも、彼女の作り出す空気の居心地の良さとか。


好かれる理由ならば幾らでも思いつく。
を疑ってはいても、カカシは容易にそれを認めることが出来た。
むしろ、だからこそ意地になってを疑う立場を貫いているのだ。

誰もが気を許している不可思議な存在―――それを無条件で許容するにはカカシは
忍でありすぎるのかもしれない。だが、誰も疑う者がいないからこそ、自分一人く
らいは警戒しておかねばと、そう思ってしまうのは止められない。

これが貧乏性というやつだろうかと思い当たって、カカシは一人苦笑した。
勿論その程度では消した気配に変化は出ない。

しかし、


「そーか、俺の事ちゃんに吹き込んだのは君だったんだね、山城アオバ君」


折角消した気配を突然現して、カカシはアオバの背後に立った。


「「「うわ?!」」」
「やっ、諸君」


機敏に飛び退ったライドウとゲンマに反して、当のアオバは距離を置きたくともがっ
ちりとカカシに肩を押さえられて身動きできない。
たらり…冷や汗が一筋、アオバのこめかみを伝った。


「は、はたけ上忍……いつから、聞いて…?」
「ん〜? 最初から。ってか、気配探れないなんておまえら気ぃ抜き過ぎ」


にっこり笑う。
……笑っているのに、僅かに見える右目が笑っていない。
特別上忍3人が身を竦めたのを横目で確認し、「まっ、いーデショ」と気がなさそ
うに頷いた。


「…はたけ上忍、それは?」


そのカカシが小脇に抱えているものに目を留めたのは、目敏いライドウ。
一抱え程の四角い箱を丁寧に風呂敷に包んであるそれを、「ん? これ?」カカシ
は存在を忘れていたかのように1・2秒見つめてから、 


「これはね〜愛妻弁当」
「「「は?」」」
「あ、まだ妻じゃないね。だったら、ん〜……愛情弁当?」


嬉しそうに微笑んだカカシに、3人は先ほどとは違う意味で目を剥いた。







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カカシさん、悪ノリ(笑)