気になるものは気になるんだから仕方がない。
気にするなと言われれば余計に気になるし、
忘れろと言われたら、何を隠しているんだと疑いたくなる。
「何故気になるのか」を考えないままに。
世界と引き換えにしても欲しいもの
調べても調べても、全くと言って良いほど目ぼしい情報が無い。
これまでに判ったことといえば、
・里に現れるほぼ1年前に綱手に出会い、医療術の手解きを受けたらしい。
・近所・患者・病院の同僚の評判は概ね良好。子供と年配の世代には特にウケが良い。
・部下のうずまきナルトと同じアパートに住んでおり、時折一緒に食事をする程度に
親密な仲であること。
・彼女が木の葉隠れ里に来たのは綱手の指示によること。その際、綱手の依頼で彼女
を指定の場所まで迎えに出たのは紅の率いる8班だったらしい。
精々がこの程度。
出自が何処なのか、何故この里に来る事になったのか、里に来る以前は何をしていた
のか、肝心な事は何一つ判らない。
何より、忍でもないのに一瞬で重傷を癒せるほどのチャクラを操れるのは何故なのか。
掌仙術といえども忍術、綱手が伝授したにしてもそう簡単に一般人が習得できるもの
ではなく、またそう簡単に伝授されて良いものでもない。『伝説の三忍』と呼ばれる
綱手がそのことを弁えていない筈はないのだから、そこには余程の理由があるに違い
ない。……の、だが。
これが全く見当も付かないときた。
ここまで何も出てこないと、誰かの作為を感じる。
それが誰かといえば、当然三代目火影しかいないわけだが、正面から問い合わせてみ
たところで、答えてもらえるとは思えない。
「イビキは絶対、相手にもしてくれないよね〜?」
八方塞とはこのことだ。
「いい加減に諦めたらどうです?」
呆れ顔でそう助言するのは特上の不知火ゲンマで、その隣では同じく特上のみたらし
アンコがうんうんと頷いている。
「冷静に考えりゃ、火影がOK出してる時点で「詮索無用」ってことでしょうが」
「大体、が不審な行動をとってるんだったらともかく、普通に生活してるだけ
じゃない。気になるのは解るけど、気にし過ぎなんじゃないの?」
「暗部の監視も付いてんでしょう?」
「う〜ん、そうなんだけどねぇ」
気になるものは気になると、苦笑うカカシの表情に二人は処置なしと溜息を付いた。
そんな会話を『人生色々』で交わしていたカカシだったが。
現実とは異なもので、八方塞のどん詰まりには9番目の小道が開いていたらしい。
「カカシ先生!」
待機命令も解除となって、それではと建物を出た途端に騒がしい声が彼を呼び止めた。
それが問題児な部下のものなのは確認するまでもない。
忍ぶのが身上の忍者がそんなに騒がしくてどーするのよと何度繰り返したか解らない
呟きをもう一度胸の内で呟いて振り向けば、そこにはナルトの恩師であるうみのイル
カまでがいて、ナルトの様子に苦笑いしている。
「なんだ〜? ま〜った、イルカ先生にたかってるの、お前?」
「またって何だよっ! 人聞き悪い事言うなってばよ!!」
「こらっ、ナルト! はたけ上忍に向ってなんて口の利き方をするんだっ」
すぐさま飛んだ生真面目な叱責を、しかしカカシ本人が止めた。
「あぁ、いや、いいんですよ。こいつらの生意気さには慣れてますから」
「しかし…」
「それより、二人揃ってどちらへ? 『一楽』ですか?」
「残念! 今日は違うんだってばよ、カカシ先生っ」
「へ? 違うの?」
この二人がこの時間揃って何処かへ向うとするとまず間違いなくラーメンの名店『一
楽』だろうと思い込んでいたカカシは、ナルトの「してやったり」な表情に目を見開
いた。
イルカに視線を向けると、彼は何故か照れ臭そうにしている。
「今日は俺んちで食うんだってばよ!」
「お前の家で? お前が作るのか?」
「違うってばよ! ご飯はねーちゃんが作ってくれるの!」
「……ねーちゃん?」
ぴくり、と僅かな反応を示したカカシを、しかしイルカは勘違いしたようで、
「ご存知じゃないですか? ほら、最近この里に来られた、病院の先生です」
ナルトと同じアパートらしくて、仲が良いそうなんですと、人の良い笑顔で説明して
くれる。
「ねーちゃんがご馳走作ってくれるっていうから、イルカ先生誘ったんだって
ばよ。サクラちゃんとサスケも後で来るって」
「へー、お前がサクラはともかく、サスケを招ぶとはね」
「し、仕方なくだってばよっ。ねーちゃんが皆に会いたいって言うからっ」
「照れるな照れるな。良い事じゃないか」
にこっと笑むと、ナルトは唇を尖らせてそっぽを向いてしまった。
が、その頬が真っ赤なのは誰の目にも明らかで。
「…しかし、サクラたちやイルカ先生まで誘っといて、どーして俺には声掛けないわ
け?」
がし。
カカシの左手がナルトの右肩を掴んだ。
「せ、せんせい?」
カカシの右目はニコニコと微笑んでいるように細められているものの、何故かその背
後から不穏な空気が流れてくるようで、知らず、ナルトの腰が引ける。
ニコニコニコニコニコ…
笑顔の圧力にイルカの顔も強張っている。
「俺も行く」
「ええっ?!」
「は、はたけ上忍?!」
驚きの中に混じる非難の響きをものともせず、
「いーデショ?」
カカシはきっぱりと言い切った。
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ヒロイン登場せず。(苦笑)