あなたへの愛































ドアの外に、温かい気配がした




「カカシさん、いるー?」
「ん〜、どーしたの、急に?」




オレは、口元に微笑を刻みながらベッドに起き上がった
ドアの外の、少しくぐもった声が躊躇いがちに言った




「うん…夕食の材料、買いに行くんだけど一緒に行かない?」
「…ま!いーでしょ。じゃあ用意するからそこで待っててくれる?」
「うん!」




オレは素早くベストを身につけると

ある決意を秘めた胸のうちを悟られないように
笑顔をつくると


ドアノブに手をやった





















「おう、カカシ。買い物かい?今日はマグロが安いぜ!」
「ああ、あとでねー。」




オレは、バカでかい声でオレの名前を呼ぶ
顔見知りの魚屋にひらりと手を振った

魚屋の親父は、人の良さそうな顔を大げさに顰めてから
オレの隣にいる人物に気付いて言った




「何だひやかしか?って、んー?ちゃんじゃないか。さては、デートだな。」
「た、ただの買い物よ!おじさんったら!」




真っ赤になって言うの台詞を遮って
オレはにっこり笑顔を取り繕うと言った




「そ!デートなの。だからあとでね〜?」
「ははは、そうかそうか!じゃあ楽しんで来いよー!」
「ありが〜と。」




そのまま、ぶらぶらと商店街を歩きながら
はまだ赤らんだままの頬で言った




「もー、カカシさんったら!デートだなんて…。」
「だって、そーデショ?」




オレが、からかうようにの顔を覗き込むと
彼女はむっと頬を膨らませて言った




「買い物だってば!」
「ハハハ、じゃあそーゆー事にしときますか。」




オレは、さり気なくの手に自分のそれをあわせると
がそれに意識を回す前に、言葉を続けた




ちゃんも、大変だね?家業…とはいえ。」
「ううん、私は別に。家事は嫌いじゃないし。皆、面白い方ばかりだし。
 それに、これがなかったら私きっと…。」




はそこまでいって口を閉じた



は、両親を「木の葉潰し」の際に一度に失っていた

彼らは忍ではなかったものの、実際…の両親のように
巻き込まれた一般人は少なくない


は、両親の営んでいた独身の忍の為の寮を
…それ以来たった一人でやりくりしていた


不健康極まりないオレの生活を心配した
お節介なの両親に薦められて

オレは押し切られた形になり少し前から、その寮に住んでいた

のことも知っていたが
よく笑う可愛い娘だなくらいにしか印象はなかった



しかし、そんな中あの事件が起きた。



今も明るく笑うは、事件の前も後も変わらないように見えた
だけど、オレの心の何処かが否と言う


落ち込む暇も、ないほどに
いや、落ち込む暇がないように


君は、その頼りない身体にそんな思いを閉じ込めて
いつもオレ達忍の為に温かい笑顔と料理を用意してくれる


…辛くないはずなんてないのに。




オレは、少しの間瞳を閉じてから顔をあげ
に言った




「…ちゃん。まだ夕食までには時間があるよね〜?」
「?うん、どうしたの?」
「じゃ、ちょっとオレに付き合ってくれ〜る?」




首を傾げたに、オレは得意の笑顔で答える




「うん?って、キャー!!カカシさん!私重いのにっ、降ろして〜っ」
「ちょっと我慢しててねー?この方が早いから。」
「そ、そ、そういう問題じゃ…っっ!!!」




問答無用でを肩に担ぎ上げて
慌てふためくその姿を思わず可愛いと思ってしまってから

オレは大地を蹴って走り出した


















「はい、ついたヨ。」
「…つ、ついたって何処に…!!わあっ…すごい!」




軋んだ音が聞こえてきそうなくらい
ぎっちり閉じた瞳を開けた


目の前に広がる清流と小ぶりな滝に、日の光がキラキラと反射して
宝石のように輝いている


そんな景色を見て、思わずといった風に感嘆の声を洩らす




「デショ?こないだ偶々通りかかってね?ちょっとした穴場かな?」
「こんな事なら、水着持ってくればよかったなぁ…!」




心底悔しそうに言うに、オレは苦笑して言った




「ハハハ、それは今度ゆっくりと…また来ればいいヨ?」
「だってこんな遠い所、一人じゃ来れないし…。」
「オレが連れて来てあげよーか?」
「ほんと?!また連れてきてくれるの、カカシさん?」




パッと顔を輝かせたが、オレを見上げた

オレは乱反射する光のせいだけではなく
瞳を僅かに細めてを見つめると言った




「…そーねー、ちゃんがオレの質問に答えてくれたら、かなー?」
「え、なに?」




不思議そうに首を傾げるの頬に手をやると
オレはまた苦笑して、静かに言った




ちゃん、オレは君の事が好きなんだけど。」
「?!!」




大きな瞳を見開いて、驚き以外の色を消し去った
オレは続けた




「最初はねー、ただ可愛いなーって思ってただけだったんだけど。」
「嘘っ…」




は真っ赤になってオレを見上げる
オレはより一層目を細めると、言った




「嘘じゃな〜いヨ。君はいつもにこにこしてて。
 …オレ達みたいな血で穢れた人間が触れてもいい娘じゃないって…
 今まで自分を誤魔化してきたけど。」
「カカシさん…」




オレは、ちょっと溜息をつきながら言った




「も、限界みたいなんだよね?気持ちばかりが膨らんで…
 オレは…君を護りたいんだちゃん。それなのに。この薄汚れた手は…
 このままだと君を傷つけてしまうかもしれない。」
「…。」




君が他の男といれば、身体中の血が意味もなく沸き立って

君が一人でいれば、その細い背中を抱き締めたくて
少しでも長く君の笑顔を独占していたくて

君の姿が見当たらなければ、知らず知らずに視線は君を求め彷徨う


近くにいれば、いるほど
オレはジワジワと溢れ出す愛しさと嫉妬に身を焼かれる



与えるばっかりの君に
奪うばっかりのオレが、魅かれてゆく




ま!…そんなの全部、オレの勝手な都合でしかないけどね?


君の笑顔が少しでも多く見ていたいというのは、ホント。

だから…君からそれを奪う可能性のあるものは
例え自分でも許せないのも、ホント。


案外、オレって不器用だったの〜ね。



オレの瞳の中の暗い部分に触れたのか
はふいにその澄んだ目を逸らして顔を俯けた



オレは頭を掻きながら、なるべく軽い調子で言った




「ハハハ…そんな顔しないで?振られる覚悟は出来てるから安心してヨ?
 そーしたらこれ以上付きまとったりしな…」
「…付き纏って。」




は消え入りそうな声で、言った




「え?」
「付き纏って欲しいの。カカシさんに。」
ちゃん…?」




今度はオレが言葉を失くす番だった
は、また赤くなりながらもオレの目をしっかりと見て言った




「わ、私はずっとカカシさんが好きで…でもだって、カカシさんみたいな人が私なんて…」
ちゃんは、可愛いヨ。…だって、オレが惚れた女だから〜ね?」
「…。」




オレが思わず、微笑みながら言うと
はじとっと疑いの視線をオレに投げかけてくる


オレの胸に、温かいが染み渡る気がした




「写輪眼のカカシの眼力を、疑う気〜?」
「もう…そんなことに写輪眼使わないでっ。…カカシさんはすぐ無理して…
 いつも自分を顧みずに無茶をして…危ない事ばかりするんだから。」




オレが、軽口を叩くと
は眉を寄せて、不満そうにそう言った


掛け値なしに、愛しいと思った




「ハハハ、面目ない。」
「わ、私の事が好きっていうなら…」
「んー?証拠ならいくらでも見せるヨ?」




ちょっと俯いたが、口篭りながらも先を続ける




「本当に私が好きなら、絶対に帰ってきて。私の所に、帰ってきて?」
「…。」
「じゃないと…私」




初めて見た、の透き通った涙をオレは
指で拭ってから

力任せにを抱き締めた




「…約束する〜ヨ。ちゃん。オレは必ず、君の処に戻る。」
「カカシ…さん」



の髪に鼻先を埋めながら、オレは言った




「何があっても、必ず。だからちゃんも…オレを信じてくれる?」
「…。」




二人の重なり合った唇が、返事の代わりになる


暫くして唇をそっと放したオレは
またの細い身体をしっかりと抱き締めた
















「カカシさん。」
「ただ〜いま、ちゃん。」




オレは、にっこりと笑って言った




「…また、Sランクだったの?」
「…そんな顔しな〜いの。ちゃんと帰ってきたデショ?」




は、慌てて持ってきた救急箱で
オレの頬の傷の手当てをしながら心配そうに言った

オレは、の手にそっとオレのそれを重ねて
の耳元にキスをしながら言った




「うん…。」
「こんな寂しがりやな子供を置いて、オレがどっかに行けるワケないデショ?」




涙の跡をなぞりながら、オレは笑った

あの日からは、ちゃんと泣くようになった

輝く笑顔はそのままに
悲しい時には、感情のままに涙を流す


泣くことすら出来なかった
これって…オレが君を、少しでも護れている証拠だよね?


オレの台詞に、はむっと頬を膨らませて言う




「…それ、失礼しちゃう。他に言い方あると思うんだけど。」
「ハハハハ、ぶすくれた顔も可愛いヨ。」
「…もー。」




唇に軽く口付けを落としてから言うと
は、ぷっと噴出して笑う

オレもつられて笑いながら、思いついて言った




「今日のご飯はなーに?」
「ええっと、今日はねー…」




嬉しそうに説明を始めたを見つめながら
オレは、目を細めて笑った



























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…すいません。
頑張った挙句、痛々しい出来になりました(笑)

「Lunar+eclipse」真逆さんに、相互リンク記念夢ですv
(こんなんいらねぇよ)


リクエストは、
「ハッピーエンドなカカシさんでしかもイチャイチャ甘なお話だと嬉しいです。」
でした〜v…達成できているとは思えないのですが、
そこはもう、気になさらず!!(笑)←おい。


読んでくださったレディも、有難うございましたv


Complete Mirage
あゆら


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いや、要ります!!
絶対要ります!!
こんな素敵カカシ氏、何があっても手放せません!!

あゆら様、本当にありがとうございます!!