理路整然と話す。

頭の回転は速いほうだと思っていたけれど、これはなかなか  










世界と
えにしてもしいもの











「それでは彼奴らは其方の正体を知って狙ってきたわけではないと、そう言う
のじゃな?」
「断言は出来ませんけれども」


三代目の鋭い眼差しにも臆することなく頷きを返すはどこか暢気な雰囲
気さえ漂わせて、常日頃の態度とあまり変わることがない。
そういえば最初に正体を自分に明かしたときもそうだったとカカシは思い出し
た。彼女は己が考えるよりもずっと肝が据わっているのかもしれない。もしく
は極端に鈍いのか、そのどっちかだなとカカシは勝手に断定する。


「そう考える根拠は?」
「幾つかありますけど、一番の理由は彼らが私の意識を奪おうとしなかったこ
とでしょうか」
「どういうことじゃ? 最初に薬を用いてきたのは彼奴らではないとでも」
「ああ、いえそうではなくて。薬の効力が切れて私が意識を取り戻したと知っ
た後のことなんですが、彼らは私の身体を拘束しようとはしてきましたが、再
度意識をなくさせるような……えっと、幻術って言うんでしたっけ?」


伺う様に傍らに立つカカシに視線を向けると、カカシは無言のまま頷いた。
それを確認すると、はまた視線を三代目に戻す。


「そういう類の術を行使しようとはしてこなかったんですね。私のチャクラの
ことを知っているのなら、まず真っ先に意識を支配下に置こうとするはずです
から、彼らはそのことは全く知らずに、単に私を『綱手姫の弟子』とだけ認識
していて、誘拐を企てたのは私を介してお師匠の技を盗もうとしたのではない
のかと…」
「ふむ……断定するのは危険じゃが、確かに筋は通るの」


どう思う、カカシ。
問われてカカシも実際に彼らと対面して同じ印象を受けたと答える。


「奴らのさんに対する態度は明らかに一般人に向けるそれでしたからね。
さんの秘密を知っていてあの対応をしたのなら、奴らはかなりの馬鹿だ
ということになりますが…」
「そうは見えなかったのじゃな?」
「寧ろその逆でしょうね」
「ふぅむ……二人が言うとおり、機密が漏れていないのであれば一安心なのだ
が……」


それでもまだ慎重さをみせて今ひとつ肩の力を抜ききれない様子の三代目に、
は僅かに逡巡するような表情をみせたのだが。


。まだ他にも気になることがあるなら、言っておいてくれ」
「…や、でも根拠があるわけじゃないですし……流石に気のせいかも…」
「その判断はこちらが調査したうえで下す。気のせいで済めば良いが、重要な
ことだったらどうする」
「……そうですね」


それに気付いたイビキの促しにあってしぶしぶ口を開いた。


「実は  










20分後。
火影の執務室から開放された途端に廊下に蹲るの姿があった。


「緊張した〜〜〜〜」
「お疲れさん」


深々と息を吐く膝の高さの頭を、部下たちにするようにぐりぐりと撫で回して、


  しまった、馴れ馴れしかったかな?


はたと気付く。
が、は気分を害するどころかおとなしくその手を受け入れ、のみならず
逆にカカシの手に気持ち良さそうに擦り寄ってくるような素振りをみせたから。

なんとはなしに嬉しくて、カカシの手はよしよしと少しクセがあるのに滑りの
良い髪の間を何度も往復する。
暫くそうしていると、がクスクスと笑いだした。


「ん?」


どーしたの?

問いかける自分の声までもがクスクス笑っているようで、忍びのクセにこんな
に感情を表に出すなんて、とカカシは少しの気恥ずかしさを覚える。

けれどそれもほんの一瞬。


「いや、我ながら単純だなぁって思いまして」
「?」
「カカシ先生に頭撫でてもらっただけで落ち込んでたのが復活しちゃうんで
すもん」


単純でしょう?
立ち上がって少し恥ずかしげにしながらもニッコリ笑んだその顔に、思考は
あっさり停止した。



そんな微笑を見たのは初めてだから。



〜っ!!!」
「ぅきゃ?!」


ぼうっと呆けていなければ彼女が倒れる前にその原因を取り除けていたのだろ
うが、の笑みに見蕩れていたカカシに出来たのはその柔らかな身体を床
に衝突させる前に自分の胸に背後霊よろしくへばりついたモノごと引き寄せる
のが精々で。


「…アンコ、お前ね…」


気をつけなさいよ、と反応が遅れたことを誤魔化すように原因を睨みつけたが、
アンコはそれをあっさり無視して尚もにへばり…もとい、縋りつく。


〜、無事でよかったわ。ほんっとにごめんねぇっ」
「あ、アンコちゃん? どうしたの?」
「どうもこうも、昨日アタシが油断しなければアンタに怖い思いさせることな
んてなかったのに。ごめんね、完璧にアタシのミスだわ〜」
「だからさ、危ないでしょーが。さんが転んで怪我したらどーすんの」
「だーっ、カカシうっさい! アンタはあっちでイビキと打ち合わせでも何で
もしてな!」


綺麗に無視されたことに異議を唱えようと口を挟めば、邪険そのものの態度で
追い払われる。
流石に少しむっとした。

が、アンコが指差す方向には本当にイビキが顔を出していてカカシを手招いて
いたから、仕方ない。


「アンタに何か合ったらどうしようと思ったわよ、本当に無事でよかったぁ」


いささか後ろ髪を引かれる思いでカカシが去ったその背後では、興奮が納まら
ないらしいアンコがむぎゅうっと首筋に抱きついての息を詰めていた。
苦しいよ、と腕をポンポンと叩いて意思表示したお陰で僅かに緩んだ腕の中、
くるりと向きを変えたは腕を回して逆にアンコの体を抱き締めた。


「大丈夫だいじょーぶ」


の手が、ゆっくりとアンコの髪を梳く。


「特に怪我だってしてないし」


普段よりも幾分低めの豊かな声がそぅっと囁く。


「確かにちょっとドキドキしたけど、そんなに怖くはなかったよ?」
…」
「だからね、大丈夫。アンコちゃんが気にすることないよ」


ぽんぽん、と。
母親がむずがる子供にするように背中を叩かれるのは余程効果があるのだろう
か、アンコの表情がゆっくりと苦笑めいたそれに変わってゆく。


「あんたってば、もう…見え透いた意地なんて張らなくていいって」
「意地?」
「怖くなかったって嘘にきまってんでしょ。命狙われて怖くならない奴なんか
いないわよ」
「んー…」


それはそうなのだけれど。
確かに、怖い思いもした。ぎゅっと心臓を鷲掴みにされて捩じり上げられたよ
うな、痛いくらいの鼓動も感じた。

けれど。


「…やっぱり、そんなに怖くなかったよ?」
「はぁ?」
「そりゃ、怖いことは怖かったけど、それよりも「この状況からどうやって逃
げ出すか」とか「どこまで時間稼げるんだろう」とか、もうそんなこと考えるの
でいっぱいいっぱいだったし」
「……ほんとに?」
「ホント」
「意地でも強がりでなく?」
「うん」
「……どんだけふっとい心臓してんのよアンタ」


呆れた、と言葉でも表情でも表現するアンコには苦笑を返して、







「だって、絶対カカシ先生が助けてくれるってわかってたから」







一瞬アンコの表情が強張ったのにも気付かず、「だからそんなに怖くはなかっ
たよ」と繰り返した。






next.

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次から二人の関係が動きますよ〜。やっと!(苦笑)