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不満 小さい子をあやすように頭を撫でたり、抱っこしたり。 の視線はさっきからずっとその『小さいの』に注がれている。 『大きいの』の大いに不満げな視線に気付きもせずに。 ![]() あんなの連れて帰らなければ良かった。 カカシは真剣に後悔していた。 何をどう間違ったのか。 チャクラの不安定な状態で術を行ったせいなのか何なのか。 慣れてるはずの影分身の術。 数十体の分身を出したときには気がつかなかったが、戦闘が終わって見回したとき に、それはいた。 多分サイズは1/4スケール、カカシモデル。 縮尺のせいか本物よりも幼い顔立ちのそれを見つけた瞬間、カカシの脳裏に過ぎっ たのは、子供好きの恋人がこれを見たら喜んでくれるに違いない、だった。 どうしてこんなのが出来たのか、とか。 慣れ親しんだ術を失敗したのは何故なのか、とか。 およそ、放置したままでは今後の死活問題に発展することは確実な疑問はカカシの 頭の中には一切浮かんでこなかった。 任務完了の報告を同僚に押し付けて、それを小脇に抱えるや一目散に恋人の下へと 馳せ参じた。 道中で擦れ違った忍たちが何故か皆一様に驚いた顔をしていたが、そんな瑣末事に 関わっている暇はないとばかりにカカシはひた走った。 そしてはカカシの予想通り、最初はとても驚き しかしすぐに眼を輝か せてそれに飛びついた。 チビカカシは出来損ないと雖もカカシの影分身だ。 それがちやほやと可愛がられて、更にの嬉しそうな楽しそうな、そんな満面 の笑顔まで見れるのだから、これが嬉しくないはずがあろうかと最初のうちはカカ シもニコニコと上機嫌で二人を見守っていた。 しかし、だ。 「チビカカシかわいー!」と頭を撫でる。 「ね、お菓子食べる? …あ、本体と同じで甘いものあんまり好きじゃないのね?」 と言いつつ「はい、あーん」とクッキーを与える。 「抱っこさせて、抱っこ!」言いながら膝の上に乗せてぎゅうっと抱き締める。 「わー、髪の毛ふわっふわ。やわらかーい」頭のてっぺんに頬をすりすりとすり寄 せる。 俺には一回もしてくれたことないよ?! 脅してもすかしても煽てても宥めても物で釣ろうとしても駄々を捏ねても懇願して も、絶対にカカシ自身にはしてくれなかった大サービスのオンパレードに、チビカ カシは至極ご満悦そうで、その分本物のカカシの機嫌はどんどん急降下していく。 それも当然だろう。 小さかろうが多少が意見が幼かろうがチビカカシはカカシの分身、つまり見た目は どうであれ、中身は本物カカシと全く変わらない。 一人の健全な『男』なのだ。 それが証拠にの胸に顔を埋めて抱きついているチビカカシの顔はこれ以上な いほどにだらしなく緩んでいる。 小さくてもチビカカシは立派に『男』。 そしてカカシの脳内ではに近づく全ての男は『敵』と認識される。 いっそのこと、さっさと消してしまおうか。 何度もその考えが頭を過ぎったが、突然そんなことをすればチビカカシをすっかり 気に入ってしまったらしいに怒られるのは目に見えている。 他の男のことで自分達が喧嘩するのは全くもって良ろしくない。 なので、それは出来ない。 しかし、そろそろ忍耐も限界。 長年鍛え上げた精神も、を目の前にした途端十万里の彼方へ高速で投げ出す カカシは、今回もその習慣に逆らうことはしなかった。 「」 後ろから腕を回し、の肩を抱き締めて軽く身体を預けると、は驚いて 小さな悲鳴を上げた。 「な、なに? 突然」 久し振りにの目に自分が映った気がした。 カカシはその目をじっと覗き込む。 「そいつはもういーデショ? 今度は俺の相手して?」 言いながら腕を伸ばしてチビカカシの後ろ襟を掴むと、ぽいっと投げた。 気付いたがそちらを振り向こうとするのを顎を掴んで阻止する。 投げられたチビカカシは小さくてもカカシの影分身だけのことはあるのか、綺麗に 空中で一回転すると部屋の対角にあたる隅に音もなく着地した。 「もうっ、チビカカシともうちょっと遊びたいのに」 「……は俺よりチビの方がいーの?」 尚も言い募るに流石にむくれてそう言うと、は一瞬驚いた表情をして、 でもすぐにクスクスと笑い出した。 「自分の分身にまでヤキモチ焼くの?」 「とーぜん。は俺だけのものなの! ……で、返事は?」 答えは判っているのに、それでも、冗談でも「チビカカシのが大事」なんて言われ たら凹むなぁ、なんて頭の隅の隅で弱気になってるカカシだったが、は 「カカシが一番大事で一番大好きよ。当然でしょ?」 カカシが望む答えをくれた。 しかも、照れたのか首筋にぎゅっと抱きつくというスペシャルなおまけ付きで。 「ん。俺も、が一番大好きで誰よりも愛してるよ」 抱き締め返すカカシは、さっきのチビカカシよりもより一層緩んで締まりのない顔 をしていた。 そして部屋の片隅では。 ![]() 今度はチビカカシが不満顔ですっかり拗ねまくっていた。 fin. あとがき 碧様のあのカカシを見た瞬間に思いついたネタだったのですが。 カカシさん誕生日とは全く関係ない話になっていることに気付いたのは書き終えて ドリーム変換してからでした(←馬鹿) でもでも、祝う気持ちだけは盛大にありますので! ========================= 『カカシ生誕祭&アスマタン2005』にコラボ作品として提出させて頂きました |