シスコンで

ちょっとマッド入ってる科学者で

コーヒー中毒


「どこがいいんさ?」


突然訊かれた。










月下の想










「どこって言われてもねぇ?」


突然難しい質問ね。
考え込んだにラビは苦笑する。


「そういう時は普通、全部、とか可愛いこと言うものじゃないの?」
「だって、そういうことを訊いてるんじゃないんでしょう?」


冷静な切り返しにまたもやラビは苦笑い。


は鋭すぎさ」
「そうじゃなきゃ、医療班班長なんてやってられません。皆どういうわけか酷い怪
我ほど隠そうとするんだもの。特にエクソシストはね。ほら、服脱いで」
「いや、、積極的なのは嬉しいけどここじゃまずいさ」
「お約束のボケかましてないで、さっさと脱ぐ!」
「うを?!」


言いざま、力づくでシャツを捲りあげて溜息が出た。


「………」
「………いや〜、ちょっとドジっちゃいまして」


説教はとりあえず後回し。
おざなりに巻かれた血の滲んだ包帯を鋏で切って手当てを始めた。


「部品で人を好きになるわけじゃないわ」


思い出したように一言呟いて。











「あ、
「リーバーさん」


階段を下りた途端に呼び止めた人物を認めて、は立ち止まって彼が歩み寄っ
てくるのを待った。


「コムイ室長知らねーか?」
「……また逃げたの?」


眉を顰めるにリーバーからも重い溜息が漏れる。


「…まぁ、見つけたら仕事に戻るように言ってくれ」
「解った。首に縄つけて引っ張ってく」
「そこまで……しないと駄目だろうな、アノヒトは」


苦笑よりも溜息が出るのは、それだけコムイが頻繁に逃げ出している証拠。
それでも「見つけたら」等とどこか悠長な言い回しが出てくるのは、オーバーワー
クもいいところのコムイの体調を心配しているのだろう。

自分も大変なくせに。

リーバーの人の良さにの口元に笑みが浮かぶ。
「頼むわ」と言い置いて科学班へ戻っていった同僚の背を見送った。

その姿が完全に廊下の向うに見えなくなるまで。


「……行きましたよ?」


振り向かず。
誰にともなく話しかければ、


「バレてた?」


悪びれない笑顔で柱の影から現れる件の人物。


「リーバーさんだって忙しいんだから、あんまり迷惑かけちゃ駄目じゃない」
「ん〜。だって今日は特別なんだよ?」
「特別?」
「そ。ほら」


指差す先には夜の闇を覗く窓。
首を傾げたの肩を抱いて、コムイはもっと窓に近づくように促すと窓硝子を
大きく開け放った。


「うっわぁ…」


暗い闇を照らす大きく丸い月。

月光に照らされて銀に輝く石の外壁。

そこに広がる光景には思わず声を漏らす。
それを見つめるコムイは満足げに頷いて。


「今日は年に一度の月齢15.0の夜だからね」
「……どうして素直に解りやすく完全な満月の日って言えないのかな」


苦笑を漏らせば、「完全なものなんかないからね」と返された。


「だったら、完全な満月に一番近い日、でいいんじゃないの?」
「……成程」


頷いた恋人の頬に唇を寄せて。
甘えるように頭を肩に持たせかけると、コムイは少し驚いた顔をした。


「……コムイ、こういうときは肩に手を回して抱き寄せてくれたりして欲しいんだ
けど……」
「えっ、あっ、ごめんっ。そうだよねっ」


慌てて言われたとおりにするコムイが可愛い、等と言ったら拗ねるだろうか?
クスクス笑うの脳裏で、不意に答えがひらめく。

どうしてラビがあんな質問をしてきたのか。
他人の色恋沙汰なんて一番興味無さそうなのに。


「…どうかした?」


じっと見上げる視線に気付いてコムイが訝しげに首を傾げる。


「……なんでもない」
「そう?」
「コムイ」
「何?」


もしも不安に感じてるなら。
自信が持てないでいるのなら。
それは取り除いてあげたいと思う。なんの衒いもなく。


「大好き」


コムイは一瞬目を瞠って。
それから微笑んだ。

慈しむような、けれどどこか照れたような内気さも垣間見える黒瞳が、の姿
を映しこんでいた。


「愛してるよ、僕は」
「本当に?」
「勿論」
「嬉しい」


だけど、知らない振りをしておいてあげよう。
いつだって自分の感情を綺麗に隠してしまう彼が、そんなに不安だったなんてきっ
と知られたくないと思うから。


この見事な月に免じて黙っていてあげようと思った。







fin.

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ちょっと中途半端。
コムイは難しい。

お月見ネタ2005