この世界にいきなり飛ばされて2日目。
「ちゃん! 起きてよ、ちゃん!」
リュウちゃんにいきなり叩き起こされた。
Weekest Rider現る!!
「も〜、なに? いきなり」
っていうか、乙女の寝室に断りもなく入ってくるな?
にっこり笑いながらも妙な迫力に一瞬怯んだ様子のリュウタロスだったが、
すぐに気を取り直しての両腕をひっぱり上げた。
「うわ、ちょっとリュウちゃん?!」
「早く! 早く起きてよ! いつまでも寝てないで」
「わかった! わかったからちょっと待って!!」
流石に寝起きの顔のまま皆と顔を合わすことは出来ない。
そう言って一旦リュウタロスに手を離してもらうと、彼は待ちきれないと
いった風情で早く早くと急かしてくる。
「一体何があるの?」
ブラシを動かす手を止めて訊ねれば、
「今ね、食堂車に良太郎が来てるんだ」
「え?」
「、昨日良太郎に会いたいって言ってたでしょ。だから呼びに来て
あげたんだよ。偉いでしょ? 偉いよね。褒めて褒めて」
「うんうん、偉いねー。リュウちゃんすごいねー」
わしわしと撫で難い頭 背が高い上に、角だの何だのでごてごてしてる
せいだ を無理矢理撫でると、「えへへへへ」と嬉しそうに笑うのが可
愛らしいと思う。わざわざ膝を屈めて頭を撫で易い様に差し出してくると
ころもツボだ。
「んじゃ、ちゃっちゃと準備するから!」
着替えるからとリュウタロスを個室から追い出し、はドアの鍵をか
けた。リュウタロスが居座ろうと駄々を捏ねたので。
ハナに貸してもらったパジャマを着替えたが食堂車へ足を踏み入れ
ると、真っ先に香ばしい匂いが鼻腔を擽った。
「あ、おはよ」
「ちゃんおはよー」
「おはようございます、さん」
「おはよう、さん。良く眠れた?」
「ナオミちゃんもハナちゃんもおはようございます。うん、ぐっすり眠れ
たよ。パジャマありがとうね、ハナちゃん」
「いえ、全然構いませんから」
「別にちっとも早かねーぞ、!」
「また先輩はそういうこと言うんだから。ちゃんおはよう。先輩の
ことは気にしないでね」
「おぅ、お前さんがもう一人のお客人か! おはよう、俺はキンタロスや」
「モモちゃんもウラちゃんもおはよ。キンちゃんのことも知ってるよ。お
はようございます。でもって初めまして、です」
「よろしゅうな!」
「こちらこそ」
一通りの挨拶が終わる頃合を見計らったように、の前にコーヒーと
トースト、それにゆで卵とサラダの載った皿が置かれた。だが、コーヒー
には昨日のようなカラフルなトッピングがされてない。代わりにホットミ
ルクがシュガーポットと一緒に添えられている。
あれ、と首を傾げてナオミの顔を見上げるのと、その声が掛けられたのと
は殆ど同時だった。
「そのコーヒーはさんが淹れられたんですよ。ぼ、僕なんかが淹れ
るよりずっと美味しくて、びっくりしちゃいました」
「?!」
その気弱そうな声に過剰に反応してしまったのは、仕方ないことだろう。
ぐるん、と風もないのに髪がなびく勢いでカウンターを振り向けば、さっ
きは気付かなかったひ弱そうな青年が人の良さげな笑みを浮かべて軽く頭
を下げた。ちょっとびくついた様子なのはこの際気にしないでおく。
「良ちゃん?! じゃなかった、野上良太郎さん!」
「あ、はい。初めまして、さん。野上良太郎です」
「こちらこそ初めまして〜。よろしくお願いします」
「おい、テメコラちょっと待てよ!」
丁寧に頭を下げると、モモタロスがいきなり間に割り込んできた。
「どしたの? モモちゃん」
「どうしたもこうしたもねぇ! なぁんで良太郎にはそんなに丁寧に頭下
げてんだ! しかも「さん」づけ! 俺のことは最初から「モモちゃん」
呼ばわりのクセによぉ!」
「あ、モモさんって呼ばれたかった?」
「はぁ?!」
「んー、でもモモちゃんはモモちゃんだしなぁ」
「ち、ちげーよ! そういうことじゃなくってだなぁ!」
「煩いよ、ももたろー」
べしっ。
地味に痛そうな音がモモタロスの後頭部から聞こえた。
「なにしやがる、!!」
「騒ぐな、煩い」
音を出した張本人はカウンターのスツールにふんぞり返って女王様の如く
言い放つ。
「なんだと!」
「食事時にバタバタ暴れんな。埃が立つだろうが」
はい、ちゃんの勝ちー。
間髪入れない切返しにモモタロスが言葉を詰まらせたのをみて、は
心の中での右腕を高く掲げた。
おまけに、さらに言い募ろうとしたところをハナに殴り飛ばされて、がっ
くり肩を落としたモモタロスの背中がなんとなく物悲しい。
「まぁまぁ、負けたって仕方ないよ。ちゃんに口で勝てる人はそう
はいないから」
本気で怒らせたらこんなもんじゃすまないんだよ?
ぽんぽんと背中を叩いてやれば、
「それって慰められてる気がしねぇぞ…?」
モモタロスは尚更肩を落として隅っこでいじけてしまった。