二人でお茶を飲んで、他愛ない話に興じていた筈だった。
場所だって何処にでもあるスター○ックスだし、飲んでたのも定番のモカ
フラペチーノ  寒い時期にあったかい店内で冷たく甘いフラペチーノを
飲むのは最高の贅沢なんだ  だ。

何も、変わったことはしていない。
していない、筈だ。


「ごめん、ちょっと待って」


ホントに、待ってくれ。
頼むから。


「うっわー! これってデンライナーじゃね?! マジで? ホントすっ
ごーい!!」
「だから頼むからちょっと落ち着いて!」


でもってこの状況を説明して!









デンライナーって何ですか?










白い壁、絶えず足裏から身体に響く振動と音、妙にカラフルなテーブルに
やけに派手な衣装とメイク  ちょっとピエロちっく  の美人と、可愛
いけれど普通そうな女の子。

そこまでは(まだ)いい。
問題なのは、


「あ゛あ゛? 誰だよ、お前?!」
「ちょっと先輩、女の子を怯えさせないでよ。…で、君達は、誰?」
「今、いきなり出てきたよね? どーやったの?!」


この、凶悪極まりない人外たちだ。
発言順に全身赤いの、青いの、紫のはビニールっぽいマントもついてて最
高にワルモノっぽい。
しかも奴等の後ろにはもう一匹、金と黒の派手なのも寝こけてるし。


「どーやったも何も…」
「リュウちゃん!!!」


こっちが聞きたい、と続けようとしたの台詞は、によって遮
られた。
傍らに目を向ければ、これ以上ないというほどに目をキラキラさせている。


ヤベぇ。


こうなってしまった彼女は止まらない。
身をもってそう知っているは一瞬意識が遠くなるのを感じた。

が。


「えー? どうして僕のこと知ってるの?! キミ、誰?」
「アタシ? アタシは! リュウちゃんのファンなのー」
「そうなの? 僕のこと好きなんだ」


コラそこの紫。
そんな凶悪面で小首傾げてもカワイクねーっつの。
の内心のぼやきに反して、


「もっちろん、だーい好き!」


オーバーアクション付きでそう答え、何故か喜んだ紫と一緒に踊り出して
しまった。
深い、深い溜息がの口から零れる。


「ていうか、アンタここが何処なのか知ってんなら説明して……っ」
「まぁまぁ、とりあえず、座ってコーヒーでも飲みませんか?」


訊ねているくせに、その手には既にカップがいくつか載ったトレーが掲げ
られているのは何故なのか。
断らせないつもりか。
強制か? 強制なのか!


「おい、ナオミ! いいのかよ、そんな得体の知れねぇ女!!」
「バカ桃は黙ってなさい!」


バシィッ!
隣で赤い鬼っぽいのが可愛い子に殴られてた。
ちょっと、怖い…。
それでもって、


「そうそう、とにかく落ち着いて。ね?」


そう言ってテーブルへと誘導する青いのの腕が、妙に馴れ馴れしく肩を抱
いているのも何故なんだ?













結局、二人の身元は突然現れたオーナーと名乗る人物が保障してくれた。
彼が言うには、時空ライナーは時間を行き来しているため、極めて稀だが
次元の壁に穴を開けてしまうことがあるらしく、穴そのものは即座に修復
されるのだが、運悪くそこに事物があると引き込まれてしまうのだとか。
今回はそれがだったのだろう。


「……つまり、帰れないってことよね、それ」


去り際にオーナーが置いていった2枚のプラチナ・パスを眺めつつ、
は呟いた。人が巻き込まれた場合の救済措置も規定  それが何を意味す
るのか、誰がどう決めたのか全くの謎だが  にあるらしく、無条件で保
護を申し出てくれただけでなく、このパスがあれば全ての時空ライナーに
乗ることが出来るらしい。


「そんなに気に病まないで。ここも慣れると結構居心地いいしさ」


青いの  ウラタロスというらしい  はごつい指での髪を器用に
梳きながら言うが、それは無理ってものだろう。
オーナーの説明を聞いた際にから明かされた話によると、この世界
はかの有名なバイク乗り変身ヒーローが実在…というか、目の前のこのバ
ケモノ達がそれらしい。
虚構だったものが現実であるこの世界で、果たして無事に生きていけるの
か……


「この先どうしたらいいんだろ…」


呟くの目線の先には、今は向かい合ってにこやかにコーヒーらしき
ものを飲むと紫。もうすっかり仲良くなってしまったらしい。


「アンタは立派に生きていけそうね?」
「うん、リュウちゃんは可愛いし、楽しいよ!」
「そいつぁ良かった」


興味なさげに応じたを、が気遣わしげに見返したが、
はもう一度大きく息を吐き出すと、顔を上げた。


「ま、しゃーないか」


なってしまったものは仕方がない、とは笑った。